Books Review No.75 人生の短さについて

紀元一・二世紀のローマ時代は多彩なストア主義者を生んだ。


セネカは、ストア派の中でも後世に影響を及ぼした第一人者である。


彼らストア派ストア哲学を人生の苦境や危機に処して人間を慰め導き助ける信念の学ととらえていた。

生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)

生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)

・人生の短さについて


(前略)


しかし、我々は短い時間を持っているのではなく、実はその多くを浪費しているのである。人生は十分に長く、その全体が有効に費やされるならば、最も偉大なことをも完成できるほど豊富に与えられている。
けれども放蕩や怠惰の中に消えてなくなるとか、どんな善いことのためにも使われないならば、結局最後になって否応なしに気づかされることは、今まで消え去っているとは思わなかった人生が最早すでに過ぎ去っていることである。全くその通りである。
我々は短い人生を受けているのではなく、我々がそれを短くしているのである。我々は人生に不足しているのではなく濫費しているのである。


(中略)


幸うすき人間どもにとって、まさに生涯の最良の日は真っ先に逃げていく。


(中略)


人生は三つの時に分けられる。過去の時と、現在の時と、将来の時である。このうちわれわれが現在過しつつある時は短く、将来過すであろう時は不確かであるが、過去に過したときは確かである。なぜならば、過去は運命がすでにその特権を失っている時であり…


(続く、こののち多忙な人々について触れていく)


アリストテレスもこういった。


『寿命という点では、自然は動物たちに人間の五倍も十倍もの長い一生を引き出せるように許しておきながら、数多くの偉大な仕事のために生まれた人間には、遥かに短い期間しか存続しない』と。


この世に使命を持って生まれた人にとって人生は短い。


人生の短さについて考えてみたい人どうぞ。


本は他に、『心の平静について』、『幸福な人生について』の篇があり読み応えがあるかと思います。