Books Review No.38 物質の対称性と群論

物理をやっていて対称性という概念はとても重要である。


この世の中は対称性であふれている。

物質の対称性と群論

物質の対称性と群論

私は物性物理学を研究していて、結晶構造や磁気構造、回折実験を研究しているときに必要に迫られて勉強を始めた。


本書の内容はまず、対称性は何かから始まる。


まずは第一章から三章で、結晶格子、点群、空間群を勉強する。


ここで、群論の考え方を直感的に触れることができる。問題も(解答もきちんとある)多く登場し、空間群・点群自体を勉強するのにも大いに役立つ。


そして、次の章では


第四章 群論入門


群論の定義が与えられ、数学的に群とはどういうものかここで整理できる。


以外にありがたいのは、その次の二章


第五章 量子力学の復習
第六章 球対称場における電子の状態


ここではシュレディンガー方程式やブラやケット、摂動論や変分法について普通の教科書とは違う視点で記述されていて、僕としては新鮮で分かりやすかった。


次の章からは応用で


第七章 配位子場理論
第八章 分子軌道法
第九章 分子振動
第十章 バンド理論


などを対称性の観点から整理して勉強することができる。それぞれ一つ一つが教科書になるくら
いの内容だが、対称性という一つの視点から勉強しなおすことは十分に意義があると思う。


最後の第十一章テンソルでは、


マクロな物性について対称性、特に点群の観点から整理される。


ここの章でも対称性を軸において、広範囲の物性物理を見渡すことができる。


物性物理やる人、全ての人のお勧めします。