Books Review No.114 強い円は日本の国益

強い円は日本の国益 榊原英資著 東洋経済新報社

強い円は日本の国益

強い円は日本の国益


序章より
『日本は『強い円は日本の国益』だと認識して、それを対外的にも公表すべきです。国全体としては円高政策で資源確保を目指し、輸出企業は高い品質によって21世紀型の差別化を目指すのが生き残りの道といえるでしょう』


本書で重要なのは、ミスター円榊原英資氏の視点による日本経済の目指すべきビジョンを知ることはもちろんのことだが、ミスター円が語る円とドル相場のドッジラインに始まる歴史的な背景の解説でしょう。



まさにその道にかかわってきた人のリアルでスリリングな解説で面白かった。

また印象に残っているのは、農業・エネルギー産業育成についての議論で産業政策に国が関わることについて、公的セクターの役割の重要性を説いているところ(なんでもかんでも民間でという発想ではいけない)

本書より
『私がかつて霞が関の官僚だったから言うわけではありませんが、公的セクターには民間ではできない仕事を担う義務があります。国全体の将来のビジョン、国全体の産業構造の将来のあり方を個別の企業に求めても無理というものです。ビジョンを描き、そのために必要な政策を打っていくことが求められるわけです。琑末な規制や統制は緩和すべきですし、その多くは民間に任せるとしても、国全体の大きなビジョンを描くことは、やはり公的セクターの仕事ではないでしょうか。』


本書の内容はリーズナブルで分かりやすい。



日本がこれから円高政策で行くべきか円安政策で行くべきか、多くの国民が円高政策の必要性を認識する必要があると思います。